■
こめかみのあたりを多少上にあげると
私はこの阿修羅立像に似ている。
あるとき、風呂あがりに気づいたのだ。バスタオルで頭を拭いているとき、こめかみがぐっと上がる瞬間があるが、ちょうどその状態をふとなにげに鏡で見たことがあったのだ。そうしたら。
おお、
あれだ、ほらあれだ、あの仏像だ。
似てるよ似てるよ。
沸き立った。
でも名前が出てこない。
あれだとすぐ浮かぶくらいだから、有名どころの仏像なのだ。
昨日だったか、またふとたまたまその状態で鏡を見たときに、年月たっても変わらず似ている自分を発見した。
間違いない。気のせいじゃない。
いま、本棚から「よくわかる仏像の見方」という本を引っ張り出してきた。
社会科資料集に載ってそうな、よく知られている仏像満載の本だ。
もしかしたら、こん中にあるかもしれない、と、見てみたら。
あった。
これだ。
阿修羅立像。
私、阿修羅に似てるんだ。
ところで阿修羅って何者だっけ。
読んでみたら。
“阿修羅は本来は、天部にあらざるもの、を意味する悪鬼のことで、
度重なる帝釈天との闘いに敗れ、天上界から修羅道に落とされた神です”
なんだ、よくないじゃん。
でも、堕天使と思えばちょっと可愛いか。
まあまあ、いいってことにして、
風呂あがりの阿修羅ごっこはちょっと疲れているときにやっちゃいそうなプレイです。