無償の悪

松本英子。漫画、イラスト業。

ご近所にフクロウ氏がいます

昨日、夜、近所を歩いていたら。
腕にフクロウをとまらせて歩く男性がいた。
箸で肉のような赤黒い物をときどき食べさせながら、ゆっくりゆっくり歩いていた。
やはり、目立つ。通りがかりの初老の男性が呼び止めていた。聞いているのだろう、とっても素敵なお友達ですね?、と。

私もウズウズした。かけていたヘッドホンをはずして、バイオリン演奏鑑賞中断、お散歩中にあまり声をかけられても邪魔であろうと気にしたけれど、でも、また会えるかわからないし、ちょっと許してください、と思って勇気を出してみた。

私「それは、なんという鳥ですか」
彼「メンフクロウ、です」

メンフクロウ。すぐに思った。お面だ、と。
お面をつけているように見える顔なのだ、フクロウ氏。とっても神秘的な顔つきなのだ。


メンフクロウと彼は、静かな通りを相変わらずゆっくりゆっくり歩いてゆく。
もう後ろ姿だ。
私は、家の玄関の前についても、その後ろ姿をずっと追っていた。
鍵を握りしめたまま追っていた。


家に入ってから気が付いた。
メンフクロウの名前を聞くのを忘れたのだ。
あの神秘的な顔に、どんな名がついているのだろう?