無償の悪

松本英子。漫画、イラスト業。

ぶっさー

かつてまだ会社員だったころ。

機関銃のごときあまりのセキとクシャミと鼻をかむのの連発で、隣の席の人から頼むから病院に行ってきてくれと言われてしまいやっと診察を受けたところ、数値がギリまでいってる重度の花粉症と判明、だろうなあ、あれじゃなあ。たしかに仕事にならない状態だったため、薬を貰うことにした。で、私、会社員、眠くなっては困る、それこそ仕事にならない。

眠くならない薬ってないんですか
聞く私に、医者がこたえた。
あるんです、あるんですけどね、でも、でも・・・・・
口ごもる彼は、教えてくれた。
その薬で世界で7人くらいしんでいる、と。
や、もちろんね、みんなお年寄りとか、身体の弱っている方ばかりなんです、普通の身体の方は、大丈夫なんですが、でも、やっぱりね、うん・・・・
おすすめしたくないらしかった。

でも、私、眠くなるのはやっぱり困る。
困るってのもあるし、なんていうか、そう聞いちゃうと、こう、試してみたい、ってのもあって。

医者、私の体の調子を確かめにかかった。
心電図で異常がでたことは? いままでにかかった病気は? ご家族で大きな病気になったことがある方は?
すべてクリア。
当時私、すこぶる健康体、生まれつきの多少の貧血があるくらい、あとは完璧。体力も十分。有り余る生命力。

医者、まだ不安そう。少しでも気になることがあったら、すぐにやめてください、2週間後にまたきてください、必ずですよ・・・



さっそく飲んでみた。


激効き。


ぴたりと止んだ症状のすべて。さすがなんかあったらしぬだけある、そうだよなあ、このくらい効いてくれなきゃなあ。


なんとその薬、1錠飲んだだけで、ずっと効き続けた。1日中、ではない、次の日も、その次の日も、翌週も、たった1粒で効きっぱなしなのだ。薬を飲んでそんなめにあったことがなかったため、驚いた。なにこれ。

2週間後、病院へ行く。相変わらず気にしまくりの医者、私の様子を確認する。たった1錠でずっと効いているので、それから飲んでない、と言ったら、ものすごい安堵の笑みを浮かべ、ええ!ええ!いいですね、飲んでないんですか、いいですね!これからもたまにならいいのかもしれませんね!!


薬ひきつづき効きまくりのまま、しばらくたって、激しい花粉の時期は過ぎた。
結局私は1錠飲んだだけで、その薬を飲むのは終わった。

翌年から、私の花粉症はいままでと比べものにならないほどラクになって、そしてそれから年々、ラクになりづつけた。おととし去年なんて、ほとんどなかった。



もう治ったのかと思っていた。今年の花粉のはじまり頃は、人がつらそうにしているのを見て、ああ今年も大丈夫かな私、などと思っていたのだが。


今年の花粉の量は、多分相当なのだろう。
3月はいって少ししたあたりから、再びなつかしの症状になっている。
すごい。顔がさがさ。

でも薬は飲んでいない。


もし今、あのかつて激効きした殺人薬を飲んだなら、私イッパツかもしれない。もう年寄りだもの。体力もないもの。


写真↓は先週行った北の国の海辺の温泉地でたずねた稲荷神社の、戸。

そしてそのくりぬき模様と同じ形の、石灯篭の↓。

ちなみに温泉の湯、感動的に良し。

ステキな東京魔窟―プロジェクト松

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