無償の悪

松本英子。漫画、イラスト業。

あの曲が

あるていどの年齢の方は覚えているのではないだろうか、かつて日曜洋画劇場のエンディングで流れていた曲。
淀川長治さんの、かの、サヨナラサヨナラサヨナラ、の後に流れるアレ。
思い出せない方は、コレ↓で聴いてみてください。ラスト4分40秒あたりから、聴けます。
http://jp.youtube.com/watch?v=rG172AJWVQY


日曜洋画劇場が終わるのが夜11時近く。小さな子どもの私は、この曲が当時たいへん怖かった。
夜、向こうの部屋のテレビから聴こえてくるこの曲調は、小さな私にはうまく表せなかったけれど、この先にある、まだ知らない人生のなにか大変な部分のように、そんなように聴こえたのだ。きらいだった。


いつごろから変わったのだろうか。
高校生くらいの私はこの曲がそうとう好きになっていた。
まだ知らないこの先にある人生の大変な部分なんて、まあどうにかなりそうに思ったのだろう。


一体誰のなんていう曲だろうと思ってエンディングをじっと見ても、それは出てこなかった。
兄と話した。
ラフマニノフっぽくない?もしくはリスト」
「ぽいかもぽいかも!でも、・・・なんだかクラシックじゃない気がする」
「ね。そうなんだよね」


高校生の私、テレビ朝日に電話してみた。そしたら、すっごい感じの悪いテレ朝の人が、
「あれはSO IN LOVEっていう曲なの。コールポーターの」
みたいに教えてくれた。私、コールポーター、知らなかった。コールポーター?
「知らないの?そういう人がいるのね。レコード売ってるのかって?あんじゃないの?知らないけど」

そんなわけで身元がわかってSO IN LOVE。
実際は歌詞もついている。“キスミーケイト”というミュージカルの歌だった。レコードはみつからなかったが楽譜は見つけたので、買ってきて、ちょっと覚えたりして遊んだ。でも私が大好きなのは、日曜洋画劇場で流れているオーケストラ&ピアノのバージョンで、それ以外、歌になるとどうでもよくなってしまうから、楽譜は身元の証でしかなかった。


いま、聴くと、どう思うかというと、いまでもやっぱりこの先にある大変な何かのように聴こえる。
あの小さな私が聴いていた、畏れていた未来の何かは、まだクリアされていなかったのだ。


年末になって、いつものごとく、一年振り返って、いろんな事が起こったなあ、なんて思いながら、なんだかまだこの先いろいろあるらしいと思うとき、小さな私の聴いたオーケストラ&ピアノバージョンの日曜洋画劇場エンディングがテーマ曲として脳内にいきなり。

ウチのハナちゃん

ウチのハナちゃん