無償の悪

松本英子。漫画、イラスト業。

“じょうさし”

某観光地へ取材に行ったときのこと。
お土産物屋さんに入っていろいろ物色していたら、布製ラックがあった。小さな書類やらをすっと入れておく、あのあれ。某観光地の名前と景色の絵入り。
そのラックに、
状差し
と、手書きでしるされていた。

状差し。

状差し。

品物が欲しかったわけではなく、“状差し”という表しと文字と、きっとなかなか通じないであろう音に反応してしまって、しばらくその辺りをうろうろした。ちらちらと手書きのそれを幾度も見て確かめた。いいなあ状差し。声に出さず、何度も、状差し、状差し、と繰り返してみた。
やっぱりいいなあ状差し。

どこかの雑貨屋さんに行って、状差しください、って言ってみたくなった。もしくは知人にいきなり、状差しいる?とか放ってみたくなった。
誰か私に言ってくれないかなあ、と思った、「こないだ買った状差しがね」とか。

今度お店であれを見かけたら、商品名プレートに、状差し、って書いちゃいたいです。