無償の悪

松本英子。漫画、イラスト業。

齋籐

勤め先で。電話がかかってきたと言われて、出たら。
「齋籐のことですが」といきなり話し始められ、そのまま齋籐の話が続いていく。
話しているのは40代半ばくらいの、齋籐が働くバーの経営者。女性。
私は彼女の話を途中で止めて、聞いた。「どちらのサイトウさんの話でしょうか」
私は彼女の話す人物に覚えがない。サイトウさんという名前の知っている人は同級生など人生のあちこちにいたが、多分私の知るそれら歴代サイトウではなさそうな様子であった。
彼女は言う。「齋籐に言われたんです、いつか私が引き込もってしまったら松本さんに連絡してくれって。そしたら松本さんがどうにかしてくれるからって」
話によると、どうにかするからって、私は齋籐に約束をしているらしい。
そんなこと言われても、そんなこと知らないし、それにこの私が一体ナニをできるというのかだし、その前に齋籐ってどこの誰なんだ。
彼女の話は終わらない、そして聞きながら私はハッとする。


私はそのサイトウが、齋籐であると知っている、ということ。


斉藤でも斎籐でも齊籐でもなく、齋籐である、と。


齋籐は女であること、30代半ば手前の。


齋籐はショートヘアであること。


齋籐はライター業もしているということ。



なぜ知ってるんだ。




私はそのことを電話の彼女に言わないで、電話をきった。

私は齋籐を知っているのか?

齋籐を?

齋籐だれ。




勤め先からゴーカートに乗って私は川にかかる橋を渡ろうとしている。
みんなゴーカートに乗っている。普通車なんてどこにもない、移動手段はゴーカートが世界の常識だ。
ちょっと混んでて、途方にくれる。
渋滞と、謎の齋籐に。




↑みた夢。
勤め先って、私はなにをやってるんだか。