無償の悪

松本英子。漫画、イラスト業。

なつかしいひと

今朝、起きがけよりもっと眠りに近いあたりで、夢の中で、何度もある名前を口にしていた。

目が覚めそうになって、でも眠くてまた寝かかったとき、ハッと気づいた。

それ。それだ。その名前。

わたしが昔からよく知ってるその名前。

思い出したくて、もう一度深く眠ろうとしたが、もう届かなかった。


3文字か4文字くらいの、名前。
性別がわからないタイプの。
日本名かどうかもわからない。

ただ私は、その人をよく知っていて、その名前をとてもよく知っていて、何度も口にしているのだ、長い間。多分子どもの頃からずっとずっと。
そして思うに、起きているときに、呼んだことはない。


誰だかどうしてもわからない。
多分、生まれてこのかた三十数年間、はじめて、起きているときに、こうしてその人を思い出しているのだ。


なつかしくてしかたないのだ。



↑最近スリッパがわりにはいてる布製草履