無償の悪

松本英子。漫画、イラスト業。

胸ポケットにはペンとキャラメル

okitsune2007-08-30


私は納豆は断然ひきわり派である。

たいした手間ではないが、砕くのが面倒なので、買うときはいつもつぶでなくひきわりになったものを選んでいる。


ところがそんな私の嗜好をかるく端に押しのけるつぶ納豆が某商店に鎮座していた。
写真の「浅間納豆」である。

噴煙たなびく浅間と連峰の絵柄は勿論ステキなのだが、
私のひきわり魂を蔵に閉じ込め施錠させた決め手は右横のこの一筋のたんざく、
“半澤博士製法”
これである。

誰。
誰半澤博士。
製法なに。


パッケージを見回しても半澤博士に関する説明は何もない。製法に関するそれも。これは
「知らなきゃモグリ」
の表しなのか
「のどか」
なのか。


そして思った。
あーたらこーたら説明があったら私のひきわり魂は負けなかったかもしれない、と。そしてこれは是非「のどか」であって欲しい、と。


携帯での半澤博士&浅間納豆の検索結果は、ただ1件、これを買って食べたというブログしか出てこなかった。
いい。
凄くいい。





いそいそとお米をといで、いまかいまかと炊けるのをまつ。ああ幸せだ、博士わたし幸せです、博士とのどかな浅間納豆本舗のおかげです。


と思っていたのに。
ふと半澤博士&納豆(浅間をとった)で検索したら、出てくる出てくる。

博士は、納豆界じゃ、著名だったのです。博士のおかげで納豆はよくなったのです。北海道大学の先生だったです。
知らなきゃモグリだったのです。


私の半澤博士は、本舗の人しか知らない博士でした。あとは町にいる娘だけ。親戚付き合いはしない人で。浅間の麓かなんかに住んでて、障子やぶれててキジ鍋喰ってて、はきふるした灰色のズボンが似合ってて、首から手ぬぐい垂らしてた。いつもの胸ポケット。


ご飯が炊けました。
私の眼はすこし暗くなっていたけれど、一口食べたら、それも治りました。
おいしいおいしい納豆でした。
ひきわり版出してください、本舗。