無償の悪

松本英子。漫画、イラスト業。

歓迎

okitsune2007-08-22


(いま養生中、山にいるのだが)
昼間、窓辺にいると、きれいな鳥がやって来るのが見える。
何という名前の鳥かはわからないが、茶と白と黒の、可愛くて美しい鳥である。鳴き声も可愛らしい。

鳥、何をしに来るのかというと、
蛾を食べに来るのだ。


夜になると、ここは山、灯りをめがけて大量の蛾が窓にやって来る。丸々としたデカい蛾がバタバタやって来る。
明け方になるとおのおのまたどこかへ帰っていくのだが、
わりかし“お泊まり”していく蛾も多い。
そのお泊まり組を、鳥がいただきますしに来るのだ。

私は静物化して窓辺で成り行きを見守る。
あんまり蛾が好きじゃないから、なるたけ喰ってってくれ、とか思う。
鳥の邪魔にならないように、息をころすとはこのことかというくらいに化石して、見守る。

鳥、まず、窓辺近くの木の枝なんかにとまり、偵察、飛び交いながら獲物の様子をうかがう。
次に獲物近くのベランダに着地、何気なく可愛くしている。

次の瞬間、丸々としたデカい蛾を、見事ついばむ。
私、やった!とか思う。


毎朝、あの蛾どものお泊まり組には難儀しているのだ。

窓を開けようとすると、網戸の内側につい入りこんじゃった蛾どもが、まだ張り付いてぐうぐう寝ている。
それを紙コップと下敷きで捕獲(まず紙コップで上から蛾を打尽、すかさず下から下敷きを滑り込ませて身柄拘束、それっ、と、空中に放つ)、1匹1匹外に逃がす手間は結構大変で、それは私が子どもの頃に丸太をなにげなく触った時にたまたま蛾のタマゴが包まれている袋がそこにあり、左薬指がトゲだらけになってしまったという恐ろしい過去がトラウマになっているがゆえ今でも蛾がコワい、記憶が、対蛾を難儀にさせているのであるが。

だから鳥さんが蛾を捕まえるのをどうしても応援するのだ。

鳥はあの可愛い顔で、蛾の羽やら要らない部分をテキパキむしりとって、胴体をモリモリ食べる。

ウゲー、それ、美味いのか?
とか思いながら、
明日も来てね、
と切に懇願する。