無償の悪

松本英子。漫画、イラスト業。

会津あるき

宿にチェックインする前、お昼を食べに入った所

「鶴井筒」という。昔の大地主の豪邸を移築したのだとか。中でお蕎麦とにごり酒。静かな静かな広い座敷で冷えたにごり酒をこくりと飲む悦び。









チェックアウトしたあと、東山温泉街をあるく。いい階段が幾つかあった。




射的場はやっていたけれど


ストリップ劇場東山セントラルはやっているのかもうやってないのか不明



岩が好きなので岩を楽しむ。


このあたりで、ああ、と思った。私は今回、たんたんと楽しんでいるなあ、と。せっかく来たのだからという貪欲がない。お湯に沢山入ったけれど、自然と沢山入っていたのだ。このあと、武家屋敷(という施設)の横にある充実した御土産物やさんの一角にある軽い飲食ができるところで、のんびりのんびり猪苗代地ビールを飲んでいるときなど、たんたんの至福だった。
そこから向かったのは、七日町、という所。昔ながらの蔵や洋館、木造などが道沿いに並んでいて、そこが、どこもおいしいそうなものでいっぱいなのだ、手作りケーキとか珈琲とか酒蔵とか郷土料理とか。でも。夕食朝食と本当にたっぷり食べた身には、遅いお昼といってもたいしてこれ以上具は入らない。さっきビール飲んだし。私は一体なにを選ぶだろう。1秒も迷わなかった。酒である。酒蔵試飲ゴー!の思いで溢れたが、でも会津はお蕎麦もやっぱりおいしい。お蕎麦なら少量だろう。お蕎麦屋といったら地酒も絶対置いてあるから、軽くお蕎麦とお酒、これでいこうと、酒蔵でなくお蕎麦屋さんに入った。

「きよ彦 花」というお店。
私が入店してすぐ、男性二人客が入ってきた。「いわきから来た」と言っていた。始終、なんだか妙に威勢がいい。ただかけ蕎麦を食べているだけなのにいちいち活気に溢れすぎている。蕎麦を食べる一口一口に唸りさえ入っている。一口一口にである。その唸りがまたでかい。彼らの会話のなかに「会津の人はのんびりしているねえ」というのがあった。自分達の諸々と比べているようであった。嵐のように去っていった。しばらくして、お店の奥のほうから、お店の方の声が聞えた。「いわきの方は元気ねえ」。変な印象のある話しかたではなく、のんびりと楽しそうにただ感想を言っている雰囲気だった。同じ福島でもいわきと会津ではその土地の方がそう言いあうくらい、違うと思いあっている、というのが面白かった。私はいわきに対してなんのイメージも持っていなかったが、というかいわきのことを心によぎらせた事が無かったのだが、会津に関しては優美な思いが子どもの頃からあった。
お蕎麦とお酒を注文したら、お店の方が、ウチのまぜご飯はとても美味しいと力説する。多いか聞いたら小さいお椀だという。ならばと思ってセットで注文したら、予想よりお椀が大きめで、お漬物もついていて、しかも頼んだお酒に蕎麦豆腐もついてきた。大丈夫か私の胃、と思ったけれど、ほんとに美味しかったから、どれもこれも完食。



東山温泉街の湯泉神社に、また来させてください、と、お願いしておいた。このときばかりは、私は、たんたんとしていなかった。


おわり