無償の悪

松本英子。漫画、イラスト業。

命日

昨日は父の命日だった。
でてきてくれればいいのになあとしばらく待ってみた。家のあちこちで。そんなひとり遊びを、ふとしてみていた。

父が旅立って25年も経った。

私はいま50だから、父のいない人生が半分になった。

 

25年前のあの阪神淡路大震災は明け方におこったが、あれほどの出来事を私も母も夕方まで知らなかった。

父の葬儀やらその後の様々やらでやることだらけだったから、亡くなってから暫くは朝からテレビを一度もつけずに過ごす日が続いていたのだ。

17日、夕方になってテレビを観て、関西が大変なことになっているよと母に教えに家の二階に行ったら、ああ、だからだったのね、と言われた。知人から電話がかかってきて、よくわからないことを言われたのよ、と。

あまりに大きな出来事があると、人は主語を省いていきなり話題をふることがある。絶対に知っている共通の認識として相手を信じて話し出すのだ。
たぶんそれだったのだろう。

母は、自分が疲れ過ぎていて話が理解できないのだろうと思い、相手にそれを気づかれたくないから、てきとうに相槌をうっていた、という。

 

父の命日がくると、いつも今年で何年経ったかがすぐにわからない。阪神淡路のあの大震災は何年だったかをちゃんと確認して、やっと判明している。これを毎年繰り返してきた。

今年は25年という忘れにくい数字になったから、来年はプラス1すればいい、だから来年は、お父さんがむこうにいって26年だね、と、すぐに言えると思う。