無償の悪

松本英子。漫画、イラスト業。

湯ざんまい 1

会津の東山温泉に行った。
宿は「向瀧」。

この建物の魅力も勿論なのだが、ここの、お湯に、はげしく興味があった。
自然湧出の自家源泉かけ流し100%、加水なし加温なしの完全放流式のお湯。
写真で見た浴場「きつねの湯」の造りがとっても好みで、いつか入ってみたかった。

浴場は「きつねの湯」「さるの湯」(それぞれ男女別)と、貸切風呂が3つあるが、ぜひ、源泉かけ流しのお風呂付の部屋に泊まりたくて、松の間という部屋を希望した。松の間からは、この宿人気の中庭

は見えないのだが、私はお湯第一なので、問題なかった。

山を切り崩さずに宿を造ったそうで、多くて急な階段

を進んだところに、私の松の間。


「きつねの湯」にはシャワーや洗い用の湯口はない。「さるの湯」にはあるけれど、だからお客さんは洗うときは「さるの湯」に集中すると誰かのブログで読んだことがあった。洗うのもつかるのも、極限のんびりしたかったので、人けの有る時間帯は部屋のお風呂を楽しみ、誰もいなさそうな時間帯に大浴場を満喫しようと思った。

これが松の間のお風呂。

足を伸ばせる大きさはないけれど、好きなときにいつでもすぐ入れる幸せ。
自家源泉に一番近いのが「きつねの湯」で、そこから流れてくる距離があるので、この松の間のお風呂はわりとぬるめ、じっくり入れて、それがまたいい。


夕食を19時にしてもらったので、それまでたっぷり間があった。やっと逢えたね〜のような会話を温泉としている気分で、ゆるゆるゆるゆるいつまでもお湯に入っていた。外の川の音だけが聞こえていて、山に湧くお湯に自分がぽつりといる感覚がすこぶるよかった。なんていい人なんだろう、のように、この土地のことを思った。

つづく